2020年12月末から2021年2月4日現在までネギの価格高騰が続いています。
一体なぜ、ネギの価格が高騰しているのか。
この記事では、ネギの価格高騰の理由について、ネギ農家の現状をもとに導き出した答えを書いています。
結論は恥ずかしながらネギが不作だからです。
ネギ農家の現状から見るネギの価格高騰の理由【2021年1月】
2021年の長ネギの価格が高騰している要因を長ネギ農家の現状から考察すると、不作による供給過少によるものです。
あくまでも1件の長ネギ農家(うち)の現状と周辺の長ネギ農家の声を参考に考察したものになるので、長ネギの価格高騰の理由を決定づけるものではありません。
長ネギ農家のうちの現状はこんな感じです。
過去20年で見たこともない卸値で推移
ちょっと大袈裟ですが、20年以上ネギを出荷している父でもこんなのは初めてと言うくらい、ネギに高値がつけられています。
どれくらいの卸値か具体的に。
この記事を書いている直近に出荷した2月3日の市況
等級 | 内容量 | 卸値 | 出荷数 |
太 | 5キロ | 2200円 | 0 |
2L | 30本 | 2500円 | 5 |
L | 45本 | 2700円 | 17 |
M | 5キロ | 2000円 | 4 |
S | 5キロ | 1500円 | 2 |
特L | 5キロ | 2500円 | 18 |
曲 | 5キロ | 1800円 | 5 |
B | 5キロ | 1500円 | 4 |
等級については太さで太(ふと)→2L→L→M→Sの順に分類されます。
曲(まがり)は曲がっているネギで特Lは葉っぱが足りないL。BはL以外の葉っぱが足りないネギや極端に曲がっているネギが分類されます。
これだけ見てもわかりにくいと思うので、平年並みと比べてください。
平年並みだった2020年12月11日に出荷した市況
等級 | 内容量 | 卸値 | 出荷数 |
太 | 5キロ | 1000円 | 0 |
2L | 30本 | 1200円 | 2 |
L | 45本 | 1400円 | 25 |
M | 5キロ | 1200円 | 10 |
S | 5キロ | 900円 | 5 |
特L | 5キロ | 1200円 | 1 |
曲 | 5キロ | 900円 | 5 |
B | 5キロ | 700円 | 1 |
これが平年並みの市況なので、現在の市況が高値で取引されているかわかりす。
多少の変動がありながら、2020年12月末から2021年2月に入っても高値が続いているは異常事態です。
では、何がどう不作なのかネギ農家の現状を説明します。
例年よりも生育が悪くて箱数が出荷できない
これだけ高値で取引されていれば、当たり前ですがイケイケドンドンで出荷しよう!となるんですが、採っても採っても箱数ができません。
なぜなら、ネギの生育が悪くて例年よりも細いからです。
例年通りにいけば、1月半ばくらいから太や2Lが多くなりますが、太はもとより2Lも全然つくれなくて、L・M・Sが多い状態。
具体的には太は20本くらいでSは80本くらい詰めます。
つまり、1日の作業量には限界があるので、細いネギばかりで箱数が出ず供給が間に合ってないということになります。
では、なぜこのような現状になってしまったのでしょうか。
長ネギは天候に左右されやすい露地栽培
ネギをハウスなど施設栽培している人は聞いたことないので、ほとんどが露地栽培ですが、露地栽培の野菜の生育に天候が大きく影響します。
うちのネギの生育が悪い要因は2つ考えられます。
- 8月の高温&乾燥
- 12月の寒波
ネギの生育適温は20度前後なので、極端な暑さと寒さには弱いんです。
2020年8月はまったく雨が降らず気温が30℃を超える日が続きました。
高温&乾燥が続くとネギはこうなります
これだけいたたまれない状況になると復活するまでにかなりの時間がかかりますが、持ち前の生命力で11月にはなんとか回復しました。
11月になんとか回復したネギ
ここからどんどん太っていくぞ!というところで12月の寒波です。
霜にあたり葉っぱが折れ曲がり始めるネギ
12月の葉っぱはまだマシでした。市況も12月上旬は平年並みです。
1月に入ると更に寒くなり葉っぱ全然残らなくなりました。
1月にまた、いたたまれない姿になったネギ
現状では例年よりも細いネギが多いうえに、葉っぱの枚数が足りず特LとBの箱数が多くなってます。
しかも、うちだけではなく周辺のネギ農家の方も同じ傾向にあります。
追い討ちをかけたネギの都道府県別生産量ランキング
ネギは露地栽培で天候に左右されやすいということを前述しましたが、都道府県別のネギの生産量ランキングトップ3が同じ関東地方です。
都道府県別ネギの生産量トップ3
順位 | 都道府県 | 構成比 |
1位 | 千葉県 | 14.1% |
2位 | 埼玉県 | 12.4% |
3位 | 茨城県 | 9.7% |
この3県で全国の生産量の約36%を占めています。
つまり、ランキングトップ3の3県が関東地方なので同じような気候だったため、天候に左右されやすい露地栽培のネギは、うちと同じような状況になっている可能性があるとういうことです。
ここでもう一度直近の市況を見てください。
この記事を書いている直近に出荷した2月3日の市況
等級 | 内容量 | 卸値 | 出荷数 |
太 | 5キロ | 2200円 | 0 |
2L | 30本 | 2500円 | 5 |
L | 45本 | 2700円 | 17 |
M | 5キロ | 2000円 | 4 |
S | 5キロ | 1500円 | 2 |
特L | 5キロ | 2500円 | 18 |
曲 | 5キロ | 1800円 | 5 |
B | 5キロ | 1500円 | 4 |
本来であればBよりもSの値段が高くて、2LとMの値段が同じくらいになるのがセオリーです。
しかし、BとSの値段が同じで、2LよりもMの方が安くなっています。※この時期だと2LよりもMの方が高くなることもある
つまり、SとMが市場に多く出回っていることが伺えます。
このように、関東地方のネギ農家が同じように生育不良に悩まされているとしたら、ネギの価格高騰は納得がいきます。
野菜の価格が高騰する2つの理由
野菜の価格が高騰する理由は需要と供給のバランスが崩れるからで、供給量よりも需要が多ければ野菜の価格は高騰するとういうことが、前述のネギでわかって頂けたと思います。
つまり、野菜の価格が高騰する理由は2つあるということです。
- 需要過多
- 供給過少←2021年1月のネギ
スーパーに並ぶ野菜は産直コーナーを除けば市場で取引された野菜がほとんどだと思います。
農家が市場に出荷して、市場で競で高値をつけた業者が買い付ける。
競で野菜の価格が決まっているので、供給量より需要が多ければ野菜の価格は上がるし、供給量より需要が少なければ野菜の価格は下がります。
2つの理由について少しだけ説明します。
需要過多で野菜の価格が高騰する訳
単純に生産量より需要が多ければ野菜の価格は上がるとういうことです。
しかし、2020年4月16日に新型コロナウィルスの影響で、全国を対象とした緊急事態宣言が発令された時は、需要過多による野菜価格の高騰がおきました。
飲食店は休業で学校は休校、家庭での野菜の消費量が上がったことで、需要過多となり野菜の価格が高騰したということですね。
供給過少で野菜の価格が高騰する訳
生産量より需要が上回る要因のもう一つは不作による供給過少です。
不作による供給過少に陥る要因は天候です。
例えば、季節はずれの大雪や大型の台風などで出荷するはずだった野菜が出荷できなくなるといった、予想外の天候に見舞われた場合などです。
露地栽培の野菜は天候に大きく左右されますが、天候を読むことができないので仕方ないです。
余談ですが、2020年11月には逆の現象がおきました
9月、10月と全国的に雨が少なかったことで、キャベツ・白菜・レタスなどが豊作となり、生産量が需要を大きく上回り価格崩壊が起きました。
よく言う豊作ビンボーとういうやつです。
【まとめ】ネギの価格が高騰している時のネギ農家は苦戦中
ネギの卸値が上がっていることは、ネギ農家としては嬉しい限りですが、ネギ農家も苦戦を強いられています。
そもそも、農家は商売人というよりは職人に近い気質を持っています。
なので、卸値がいくら高かろうと自分が作ったネギの出来が悪いことにストレスを感じている一面があります。
つまり、不作=高騰という現象のジレンマに苛まれいています。
また、出荷に関しては逸品(ネギならLや2L)をメインで作業内容の構成を組み立てているので、逸品率が下がると必然的に手間と時間をさくハメになります。
2020年1月のネギの価格高騰はやや異常値とも言えますが、ネギ農家もそれだけのストレスと手間・時間をいつも以上に費やしているということです。
うちで使用しているネギの機械についてはこちらの記事に書いています。
コメント
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